シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「さあ…誓え、警護団長。

紫堂玲以外は主として認めないと。

かつての…前代の次期当主に誓っていたものと同等のものを、いや、それ以上のものを此処で言葉にして示せ」


櫂は死んでいないんだ。


例え相手が慕う玲で在ろうと――

桜が仕えるべき者は櫂なんだ。


桜はそれ程までに櫂に心酔していた。


櫂を守る団長という肩書きを誇りにしてた奴なんだ。


桜は冗談が通じねえ、がちがち頭で。

嘘偽りでも…櫂の前でそんな誓いなど出来るはずもなくて。


それを判っているからこそ…


「親父殿。団長は誓えないらしい。

誓えぬ理由は…

玲が無力すぎるかららしいですぞ」



「違っ!!!」



桜が慌てた声を出して。



「だとしたら何だ?

まさか――


櫂が生きていて、

そこで聞いているから…


というわけでもあるまい?」


くつくつ、くつくつ。


「その怪しい屋敷を検分し、もし万が一"死に損ない"がいたのなら此処に引き摺りだしてきましょうか、親父殿」


「ははは。ありえないとは思うけれど、もしも万が一…そんなことがあったのなら、由々しき事態。その死を大々的に公表した紫堂の恥となる。

では久涅…」



「興ざめだな」


そう言い放ったのは久遠。


「いいか、紫堂当主。

今は資金援助はうけているが…各務は旧家。

その血は平安まで遡る尊いもの。

たかが近代、"雑種"で成り上がった紫堂とは違う」


それはいつも…櫂に言うような言葉だったけれど。


「オレの名は各務久遠。

各務家の当主。


このオレの許可無く、

勝手な真似は許さない」


この"オレ様"に――

何だか救われた気がした。



あの当主が…

久遠の"オレ様"に霞んで見えるんだ。



オレ様…万歳!!!


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