シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ほう? そんなこと…言える立場かな、久遠」
笑ったのは久涅。
「この土地が各務の象徴であるのならば――
この土地を手に入れた紫堂は、
各務を…お前を手に入れたも同然だ」
何を…言っている?
「は!!! "約束の地(カナン)"を…各務を傘下にする気か!!!
その話は断ったはずだがな」
「言ったはずだ。…地獄になると」
すると久遠は、嘲るように嗤う。
「地獄…地獄ねえ、地獄!!!
何処に…苦しんでいる人々がいると!!?」
不可解ながらも、賑わう遊園地。
だけど…不可解だからこそ、嫌な予感もするわけで。
「苦しみというものは…悦びや幸せを知る者だけが味わうことが出来る感情。
地獄とは…そういう感情が集まった場所。
だったら…
意味を…判らせてやるか、久遠」
そして久涅が取出したのは――
「「金の万年筆!!!?」」
俺と櫂が同時に声を上げた。
ああ…
もう嫌な予感が形となってくる。
黒い塔。
力を溜めた黒い塔。
久涅はくるくると万年筆を回した。
途端、
「うっ……」
俺は、またあの…脳味噌を掻き混ぜるような音を感じて、その場に耳を押さえて蹲(うずくま)った。
「煌、大丈夫か!!?」
櫂の声が聞こえる。
「か、櫂…小猿は…小猿は…?」
俺がこんなになるということは、同じ周波数だかを感じ取れる小猿も同じ事態に陥っているわけで。
俺はのろのろと体を起して、窓の外を見た。
だけど其処には――
「……いない」
小猿だけではなく、遠坂もいないんだ。
どういうことだ?
やっぱり…1人ずつ消えてしまったのか!!?