シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「何で魔方陣を!!!?」
その時俺は、朱貴の言葉を思い出して。
確か朱貴は…黒い塔は封印を壊す為だと言っていた。
だとしたら…。
「黒い塔の照準は…魔方陣。
物理的に破壊不可能だった"約束の地(カナン)"の魔方陣を、しかも10個同時になどいう荒技で破壊させてみせたのは…玲、お前と櫂。そして櫂の番犬だ。
だから…出来上がった。
電気の力と闇の力と、増幅の力。
お前達を模倣したあの黒い塔こそ、魔方陣を破壊させる兵器」
魔方陣の近くに出来た黒い塔。
そして砲撃代みたいな塔の突起は…
ああ――…
魔方陣の位置を向いているじゃねえか。
どうして今までその方向の意味に、気が回らなかった!!?
目にちらつく金色の万年筆。
今。
久涅の意思1つで…破壊出来ると…そういう状況なのか。
「各務久遠。お前の命の要とでもいうべき魔方陣が壊されたら、お前だけではなく…お前と運命を共にしている者達もあるべき姿に還る。
現状がありえないのだ。
"死"から"生"へとは向かわぬ。
全ての理(ことわり)は…あるべき姿に。
"生"から"死"へと――。
そう、これは…
逆転していた流れを元に戻すだけのもの。
その為に必要な破壊。
久遠。お前達のような道理に反した存在は…
破滅しなければならぬ」
俺は唇を噛みしめ、ダンと壁を拳で叩いた。
「しかし破滅させるのは惜しい存在だ。
次期白皇候補とされていた各務久遠。
人々を地獄に突き落とし、"約束の地(カナン)"を破壊され、そしてお前と…その仲間の命を失いたくないのなら。
"約束の地(カナン)"を寄越し、大人しく紫堂の指揮下に入れ」
突きつけた久涅の条件。
「その叡智と力を…
白皇から受け継いだ力全てを…
紫堂の為に使え」
ただ黙して聞くしかできない…
櫂の体が怒りに震えている。
「紫堂の為なら…何をしてもいいのか!!!?」
叫んだのは玲で。
それに応じたのは当主だった。
「これはこれは意外なことを玲。
次期当主たるもの、紫堂の発展の為に尽力するのが務め。
お前が紫堂を後回しに考えるのなら、お前から次期当主を剥奪し、久涅に任せてもいいのだぞ?
きっと…久涅なら、手加減無しで"約束の地(カナン)"を掌握するだろう」
駄目だ。
久涅が次期当主になってしまったら。
恐らく…
今まで以上の、その権力でもって、何をどうしでかすか判らねえ。
それに…櫂も居るんだ。
櫂の生存を知る久涅が、櫂を大義名分で討伐にかかってくる。
「久遠。
聡いお前ならば…判る筈だ。
何が一番ベストの採択なのか」
カラーン。
その時、鐘が鳴り響いた。
これは――
0時を告げる鐘の音だった。