シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ああ――
時間が来たな。
時に玲――」
玲に向けられたのは、当主の声。
「お前は…そこの娘とどうなったのだ?」
その言い方に、虫酸が走る。
さも判っているとでもいいたげに。
玲は何も答えなかった。
カラーン。
「期限は明日までとしていたが、返答がない処を見れば…所詮お前には無理だったのだ。何をどうやっても…お前がお前である限り。
娘からの愛は得られぬ」
愉快そうな…上擦り気味の声。
「無理だ、無理。初めからの負け戦。お前如き存在では、娘1人振り向かすことも出来ぬ。
次期当主とは名ばかり。お前は器がない」
酷えよ。
酷い言い方だ。
カラーン。
「それでも欲しいのなら、力で縛り付け日影の女にしろ。
もう…耳に届いていると思うが、お前と皇城の娘との婚姻はなくなった。
だが、巫女と子は成して貰うぞ。
お前に出来るのは、愛を勝ち取ることではなく…子を作ることくらいだ。
"男"なら誰でも出来る…本能的行為だけしか、お前には出来ん。
夢見る時間は終わりだ、玲」
感じるのは…誰からの怒りか。
玲はいつも、紫堂本家には行きたがらなかった。
そして櫂も、あのマンションに住むようになってから、玲を本家に連れようとはしていなかった。
多分俺は――
玲が冷遇されているということを知っていても、現実の場面を目にしたわけではないから…事態を軽く思っていたんだろう。
「"お試し"とやらに時間を割き、次期当主の任を丸投げし、電波で紫堂の顔に泥を塗り…そして出た帰結は、玲。
お前は…所詮出来損ないのままなのだ。
死んだ"アレ"にも及ばぬ。
そんなお前が、娘を振り向かせて結婚を取りやめさせようなど…出来ようはずがないではないか。
身の程を知ったか、ん?」
これは冷遇処の話じゃねえ。
人格否定だ。