シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「ああ――

時間が来たな。


時に玲――」



玲に向けられたのは、当主の声。



「お前は…そこの娘とどうなったのだ?」



その言い方に、虫酸が走る。

さも判っているとでもいいたげに。


玲は何も答えなかった。



カラーン。



「期限は明日までとしていたが、返答がない処を見れば…所詮お前には無理だったのだ。何をどうやっても…お前がお前である限り。

娘からの愛は得られぬ」


愉快そうな…上擦り気味の声。



「無理だ、無理。初めからの負け戦。お前如き存在では、娘1人振り向かすことも出来ぬ。

次期当主とは名ばかり。お前は器がない」



酷えよ。

酷い言い方だ。



カラーン。




「それでも欲しいのなら、力で縛り付け日影の女にしろ。

もう…耳に届いていると思うが、お前と皇城の娘との婚姻はなくなった。

だが、巫女と子は成して貰うぞ。


お前に出来るのは、愛を勝ち取ることではなく…子を作ることくらいだ。

"男"なら誰でも出来る…本能的行為だけしか、お前には出来ん。


夢見る時間は終わりだ、玲」



感じるのは…誰からの怒りか。



玲はいつも、紫堂本家には行きたがらなかった。

そして櫂も、あのマンションに住むようになってから、玲を本家に連れようとはしていなかった。



多分俺は――


玲が冷遇されているということを知っていても、現実の場面を目にしたわけではないから…事態を軽く思っていたんだろう。


「"お試し"とやらに時間を割き、次期当主の任を丸投げし、電波で紫堂の顔に泥を塗り…そして出た帰結は、玲。

お前は…所詮出来損ないのままなのだ。

死んだ"アレ"にも及ばぬ。

そんなお前が、娘を振り向かせて結婚を取りやめさせようなど…出来ようはずがないではないか。


身の程を知ったか、ん?」



これは冷遇処の話じゃねえ。


人格否定だ。


< 1,448 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop