シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
カラーン。
「玲、お前は…小娘以外にも好きな女が居たのか」
「違うって言ってるだろ!!!?
久涅だって判って居るはずだ。凜は…」
「凜は?」
確信的なその笑みの示すものに気付き、僕は慌てて口を噤(つぐ)む。
櫂の女装など、絶対口に出してはいけない。
鋭い眼光を放つ当主を視界に入れて、僕は心に誓う。
「もう…突然何よ、久遠。まあ元気になったなら良かったけれど…。だけど久遠だって気づいているんでしょう? 久遠と玲くんと凜ちゃんは三角か…んーんー!!!」
「君は何も言うな!!!」
また久遠が芹霞の口を塞いだようで。
芹霞…またもやおかしなことを言ってなかったか?
久遠と僕と凜が…"三角か"?
"三角か"って?
………。
…まさか。
三角関係とか思っているんじゃないだろうね!!!?
僕は慌てて芹霞を見たけれど、芹霞は口を塞いだ久遠の手を何とかしようともがいている最中で、代わって瑠璃色の瞳と目が合った。
………!!!
肯定、された。
芹霞は…本気に三角関係だと思っていたらしい。
ということは…
凜が櫂だと気づいていなかったと言うことか?
櫂の記憶がないとはいえ…性別くらいは…。
いや、確かに櫂の女装は目を瞠(みは)る程のものだし…。
そして僕の頭は軽く混乱する。
こんな時なのに。
僕…誤解してたんじゃないかって気づいて。
芹霞…もしかすると、
――解放したいの。
僕が凜のことを好きになったと思って…
それで距離をとろうとしていた…とか?
遠慮してた…とか?
だから、"約束の地(カナン)"に来て…態度がおかしかった…とか?
いつ!!!?
何で!!!?
カラーン。
同時に――
現実を思い知らされる。
ということは…
僕が芹霞を好きだと言い続けてきたことは…真剣にとられてなかったということだろうか。
突如ぽっと現われた女に心奪われる、それで芹霞を捨てるような…そんな男に思われていたということだろうか。
僕は…
僕はこんなに…芹霞を想っているのに!!!
せめて――
せめて、事実だけでも正したい。
だけど…説明するには、どうしても櫂の存在が必要で。
このまま僕は…
凜が好きだと誤解されたまま…離れるのか?
僕と久遠が、同性の櫂を取り合ったという構図で?
そんなのは…嫌だ!!!