シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「13年、忘れられてたんだぞ?」
その声は、小刻みに震撼していて。
「オレの姿は何1つ変わっていないのに…紫堂当主も久涅も…たった1度会っただけでも、会ったという記憶はあるというのに――オレに『初めまして』だぞ!!?」
櫂は…黙り込んでいた。
「好きだって言ったのに…
あんなにオレを追いかけ回したのに。
お嫁さんになりたい、
永遠だって言っていたくせに…
オレは勝手に…
実らない初恋の相手にされ、
オレが待ち続けている間――
せりは違う奴に…
永遠だと運命だと…
そう言ってたんだぞ!!!?」
久遠の言葉はきっと――
「全てを思い出して――
手に入れられるかと思えば…
思い出しても尚、
オレは置き去りにされ――
オレはいつも眼中外。
何度会っても…
オレに興味すら持とうともしない。
オレが女を抱いている時でさえ…
あいつは平然と傍観してたんだぞ!!?」
秘匿されていた――
「此の地で、
オレのこの土地で――
せりが選んでいるのは、
オレ以外の男だ!!!!
いつも、いつも、いつも!!!!」
久遠の…心。
「12年がなんだ? 12年も傍に居られて、少し忘れられただけでギャーギャー泣き騒ぐのか、お前は。
だったら、オレは何だ?
13年前、少しだけしか傍に居られずに…それから13年も忘れられ続けてこられたオレは――
やっと思い出して貰えても、月に数度何時間かしか…此の地でしか逢えないオレは――
一体何だと言うんだ!!!?」
ドガッ!!!
腹立たしいというように、久遠はまた櫂を叩きつけた。
「たかが12年くらいの想いが破れただけでぐだぐだになるのなら、いっそそんな心など捨てちまえ!!! お前には荷が重すぎるものだ!!!
そんなお前に、誰がせりを渡すか!!!!」
そして。
興奮故に乱れた呼吸を何度か繰り返して、立上がった。