シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


桜ちゃんは居なかった。


何処に行ったんだろう?

桜ちゃんの姿を見つけようときょろきょろ顔を動かしたあたしに、玲くんはわざとらしい1つ咳払いをすると、


「芹霞、おいで?」


優しく微笑んで…あたしの腰を引き寄せ、当主に言ったんだ。




「これが――

"お試し"の成果です。


僕は――

芹霞を…手に…入れました」



そして、あたしの手を握った。


震えてる。

玲くんの手が震えている。


あたしを好きだと――

だから意識してくれと…玲くんは今日何度も言っていた。


何度も手を繋いだ。

何度もキスをした。



だけど――


今の玲くんは…何か違う。


玲くんの心は――

喜んでいないように思えた。


両想いだと思ったのは錯覚だったんだろうか。

そんな思いに駆られ、凹んできた時、握られた手は恋人繋ぎに変わった。


それは想いを繋ぐというより…

痛い程傷ついた…彼の心を伝えてくるもので。


あたしは、迷子になった子供を助けたような…そんな心境になった。



何だか――

切なくなったんだ。



< 1,472 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop