シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

仮に私が風紀を取り締まる"自警団"だと勘違いされていたとして。


道中で女学生が話していたからなんだというのだ?

横一列に歩いていたからなんだというのだ?


彼女達は特別おかしいことをしていないと思うのだが、目の前の少女達は必死の形相で。


言葉の最後には声が震えて、嗚咽に変わった。


まるで…一人芝居を見ているような唖然とした心地。


「あの……」


手を差し伸べ声をかけようとした時、視界に白服が目に入った。


私と同じ型の服を身につけた人間。


そこから――


私が感じていた…あの奇妙な視線の1つと重なった。



監視の視線。


これは――


制裁者(アリス)!!?


「これはこれはお疲れ様です、"ガイダー"」


1人ではなく、男女2人組。


仄かな瘴気は感じるものの、制裁者(アリス)特有の禍々しさはなく。


そう、殺気というか…闘気が感じられない。


だとしたら、これは――


「自警団!!!?」


そう叫んだ少女達の"恐怖"は凄まじかった。


「土下座しているということは、何かをしでかしたのですね。これは即効"連行"ですね。これは私めにお任せ下さい。こんな"ゴミ"如きに、貴方様の手を煩わせることはありますまい」


女が手にしていた携帯で、片っ端から少女達の写真を撮っていく。


「ああ、あああああ!!!」


少女達の絶望的な叫び声。


だから私は――


「"ガイダー"、何を!!!?」


携帯を取り上げ、握りつぶした。


「彼女達は、悪いことは何もしていない」


私が見る限り、彼女達が"恐怖"を感じるだけの悪行は犯していない。


だが彼女達は自覚している。


悪いことをしていたのだと。


道端で話していたから何だ?

横一列に歩いていたから何だ?


それが自警団の取締りの対象だというのなら、事の詳細をよく確かめもしないで、土下座をしているからという理由で"絶対悪"と決め付け、ゴミ扱いする自警団こそ糾弾されるべきだ。


此処は自警団の支配する世界ではない。

何様だというのだ。
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