シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ドラゴンヘッド?」
龍の…頭?
「は、はい…。Zodiac…っていうバンド、知ってますか?」
私は思い切り顔を顰めたと思う。
どうして今、その忌まわしい名前が出てくるのか。
「3人組の人気のミュージシャンなんですけれど、その新曲が『ドラゴンヘッド』。PVにもCDジャケットにも、その記号が多く使われているんです」
そうして鞄の中から見せてくれたのはCD。
一面に、同じ記号が描かれ、その中を…金色の龍が漂っている。
「彼らは、ひと時落ち目だったんですが、最近またパワーアップして、神秘さが増して大人気なんですよ。今、東京でゲリラライブツアーしている噂があって、何処かで目にすることがあるかもしれませんね。
CDよければ…どうぞ、お礼に差し上げます」
正直、いらない。
触れたくもないし、視界にも入れたくない。
ゲリラライブ。
もしかして…私達への腹いせか?
Zodiac。
私の脳裏に…遠くはない過去が思い浮かぶ。
櫂様と玲様と馬鹿蜜柑と私で、歌い演奏しまくった桐夏の学園祭。
芹霞さんが夢中になったZodiacが、学園継いでシークレットライブをするからという理由で、それを潰して見せようと…櫂様の提案で行ったゲリラライブ。
数時間の練習で敢行され、初めて楽器というものを演奏し、歌まで歌ったあの時。
楽しかったあの時間。
1つとなって皆で楽しんだあの時間。
今は…その時間は流れていない。