シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

次期当主となった玲くんは――

また、出会った頃の…いや、それ以上に酷い、澱んだ目をするようになってしまった。


更には――

紫堂本家で玲くんは…何か――

後ろ指さされているような気がする。


あんなにほっこり優しい玲くんを、何で皆が陰口を叩くのかよく判らない。


紫堂って、本当に嫌な処だ。


まず玲くんの叔父さんが気に食わない。


玲くんに対して、蔑んだ目を寄越すんだ。


あたしのいない場所で、玲くんと叔父さんがどんなやり取りをしているのか判らないけれど、それが穏やかなものでないことは、戻って来た玲くんの姿から判る。


玲くんは――

あたしの部屋に雪崩れ込むようにして入ってきて…


「少しの間だけでいいから…」


あたしを抱きしめるようにして、あたしの首筋に顔を埋め…不安定に乱した呼吸を整える。



これは…心臓発作の一種だと…


あたしは直感で悟った。


「玲くん、病院に行こう!!? 前はこんなに頻繁に発作起きなかったじゃない。それに顔色悪いし、やつれてきたし…」


「発作を止めようと思えば…僕は精神病院に行かなきゃね」


冗談なのか真剣なのか、それが判らない玲くんの微笑。


「ねえ、玲くん。どうしてそこまで…我慢してまで、次期当主になりたいの?」


それがどうしても判らない。


「どうして…だろうね」


だから――


どうしてそんな泣きそうな…哀しい目であたしを見るの?



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