シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
幕間1
少年は――
明け方の海を見ていた。
無限の広がりを見せる、煌びやかな碧。
光瞬くそれを見ていると、夢さえも現実になりそうな錯覚を起こす。
ありえもしないことが、起こりえるような気がするのだ。
それは少年の心の奥底に鎮める"願望"。
決して消すことは出来ない、まるで逡巡のように…ただ心を巡っていただけの儚い"願望"。
もしそれが、
現実になったら――?
だけど少年は知っている。
この海の下層に眠る真紅。
どこまでもこの海は――
罪に穢れた澱んだ色をもつことを。
罪は巡る。
何処までも巡る。
逃げ場などありえない。
終点などありえない。
全ては――
因果律の起点に戻るだけ。
そう、きっと…。
その出会いは必然だったのだ。
それは贖罪故なのか。
それとも…
何かが破滅する…予兆だったのか。
だとすれば…それもまた一興。
所詮此の世は砂上の楼閣。
自分もまた…
陽炎のような幻なのだから。
元々"生"など遙か昔に無くしてしまった少年は、
もう恐れることなど何もなかった。
煌びやかな現世での夢物語。
それが現実に還った時、人々が見るその姿は…どこまで真逆なものなのか。
人々は、何処まで絶望して狂乱するのか。
それは少年にとっては懐かしい匂いでもあり、だからこそ彼は自嘲気に笑った。
「幕が…上がったようだ」
妖麗な顔だちの少年は、海の色合いのような瑠璃色の瞳を僅かに細め、呟いた。
「――せり」
――と。