シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
皆、早く帰ってきて…玲くんを前みたいに支えてよ。
玲くんは…昔、紫堂の次期当主だったみたいだけれど、その後に玲くんから肩書きを奪った奴が死んで…また元通りになったみたい。
紫堂本家が、葬式だなんだと慌ただしかった。
あたしは、玲くんの心遣いに甘えさせて貰って、居候している身。
この家の中を探検したり、知り合いを増やしたい気分はなく、いずれ出て行く身だからと、ただ部屋に閉じ籠もっている。
それでも噂話は聞こえてきて。
何でもあたしと同じ17歳で、玲くんの従弟で…『気高き獅子』なんて変な名前を持つ美貌の少年だったとか。
玲くんは多くは語らない。
確かに17歳で病死なんて…若すぎる死は可哀相だとは思うけれど、"因果応報"だと思うんだ。
玲くんから肩書きを奪ったから、そんな目にあうんだ。
どれだけ凄い少年だったかは判らないけれど、玲くん以上に綺麗で優しくて強くて、頭がいい男なんていないから。
玲くん…きっと、今まで辛かっただろうね。
そういえば、玲くんからそんな類の愚痴なんて聞いたことはなかったな。
流石は、"我慢"の玲くんだ。
どうしてそんな玲くんに、叔父さんは辛くあたるのかな。
叔父さんがそんなだから、この家の人達もそんな色に染まるんじゃない。
だけどね、玲くんは紫堂の中で1人じゃない。
当主の息子で、死んだ次期当主のお兄さんって人が、常に玲くんの傍にいてくれているんだ。
かなりSっ気ある人だけれど、話すと中々面白い。
玲くんが居ない時とか、あたしが1人でいると…よく部屋に遊びにきてくれる。
久涅って言うんだ。
凄く端正な顔をしていて、玲くんにも通じる美貌があるんだけど、何か玲くんは彼を嫌っているフシがある。
微笑はするけれど…それが仮面のような張り付いた笑顔だということ、あたしが見抜けないはずもなく。
久涅とあたしが話していると、玲くんは直ぐ飛んでくる。
彼はいい人だよって言っているのに、玲くんは判ってくれなくて。
ああ、早く――
玲くんが安心出来る環境を…
作ってあげたい。