シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
"氷"をどうしても"ごおり"と読ませたいというのなら、"ご"のつく言葉が隠されているということ。
俺は、紙に書き出した。
"ごおうのりこう"
久遠は鼻で笑いながら、肯定した。
「そう。つまり、あの男が紫堂家に持ちかけたわけだな。
――"五皇の履行"を」
紫堂に…?
そして続けて言ったんだ。
「五皇は何かの"約束"に囚われている」
そして久遠は足下の本を拾い、机に放った。
"黄衣の王"
「緋狭の背中に"黄の印"があったというのなら尚更。
五皇全てがそれに囚われている可能性がある。
そして"何かの約束"は"履行"されたんだ」
久遠は笑った。
「あの男はどうしてもお前を此処に行かせたかったらしい。それは緋狭も然り」
考えてみれば…
ゲームを持ちかけたのは氷皇。
ゲームの帰着を…"約束の地(カナン)"への出航口の横須賀港にしたのも氷皇で。
緋狭さんの導きで、俺らは久遠に行き着いた。
「此処にしかないもの」
それは――
「五皇が1人、白皇の書物がある。
此処だけにしか、五皇の記録はない」
そう、此処は白皇の領域。
「氷皇紅皇の…駒なんだよ、紫堂櫂。
そしてオレも、な。
気づかぬまま既に…渦中に居たか」
久遠は、自嘲気に笑った。