シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
着信拒否にしよう。


まず腹立たしい着うたを解除し、次いで拒否設定をしている途中で再び着信。


突然画面が切り替わったことに驚いた私は、あろうことか指を滑らせ――押してしまった。


通話ボタンを。



『はぁっはぁっはぁっ…』



「………」



変質者らしい。


盛った犬のような気味悪い息遣いが聞こえて、"切"ボタンをまさに押そうとした瞬間。



『はぁ~やぁ~まぁ~ッッ!!!!』



キーン。


思わず私は携帯を遠く離した。


この…鼓膜を突き破りそうな、破壊的なキーキー声は。



「皇城…翠…?」



『――!!!

!!!!!!!!!


◎※△□×……』



何だか興奮していて、全然言葉になっていない。


やっぱり切った方がいい。


そう思って、再び"切"を押そうとした時、


『翠、電話が繋がり、名前呼ばれたくらいで感動して泣くな!! 貸せ。お前なら話しにならない。いいから!!!

――もしもし、桜か?』


その落ち着いた声は、七瀬紫茉?


『ああ、よかった。ずっと電源切れてたから連絡つかなかったんだ。こっちはこっちで監視されていて…今、監視人を"のした"から…ようやく話せる』


「監視?」


『ああ、ちょっと困った事態が目白押しでな、此処から身動きとれないんだ。早くお前達と合流して力になりたいのは山々なんだが…。そんなことより。紫堂櫂は…死んでしまったのか!!?』


単刀直入か。


私は口を開きかけて、すぐに躊躇した。


もし…これが罠だったら。


櫂様はどうなる?


――約束、して欲しいんだ。


七瀬紫茉の善意の質問であったとしても、誰が聞いているか判らない。


何より近くには周涅が居るんだ。



私は――

迂闊に口にしてはいけない。
< 243 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop