シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
着信拒否にしよう。
まず腹立たしい着うたを解除し、次いで拒否設定をしている途中で再び着信。
突然画面が切り替わったことに驚いた私は、あろうことか指を滑らせ――押してしまった。
通話ボタンを。
『はぁっはぁっはぁっ…』
「………」
変質者らしい。
盛った犬のような気味悪い息遣いが聞こえて、"切"ボタンをまさに押そうとした瞬間。
『はぁ~やぁ~まぁ~ッッ!!!!』
キーン。
思わず私は携帯を遠く離した。
この…鼓膜を突き破りそうな、破壊的なキーキー声は。
「皇城…翠…?」
『――!!!
!!!!!!!!!
◎※△□×……』
何だか興奮していて、全然言葉になっていない。
やっぱり切った方がいい。
そう思って、再び"切"を押そうとした時、
『翠、電話が繋がり、名前呼ばれたくらいで感動して泣くな!! 貸せ。お前なら話しにならない。いいから!!!
――もしもし、桜か?』
その落ち着いた声は、七瀬紫茉?
『ああ、よかった。ずっと電源切れてたから連絡つかなかったんだ。こっちはこっちで監視されていて…今、監視人を"のした"から…ようやく話せる』
「監視?」
『ああ、ちょっと困った事態が目白押しでな、此処から身動きとれないんだ。早くお前達と合流して力になりたいのは山々なんだが…。そんなことより。紫堂櫂は…死んでしまったのか!!?』
単刀直入か。
私は口を開きかけて、すぐに躊躇した。
もし…これが罠だったら。
櫂様はどうなる?
――約束、して欲しいんだ。
七瀬紫茉の善意の質問であったとしても、誰が聞いているか判らない。
何より近くには周涅が居るんだ。
私は――
迂闊に口にしてはいけない。