シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
少女だけを狙っていた蝶の惨劇が、更なる惨たらしい舞台に変化する。
蝶を操っているのは煌なのか、それとも別なのか。
それは判らないけれど…煌は、可視の姿でもって凄惨な光景を創り出しているのは確か。
刎ねられる。
飛ばされる。
恐怖の顔つきをした頭が。
その横では…眼窩のない少女が声を上げて地面に沈む。
たちこめる鉄の…生臭い匂い。
絶え間なく響き渡る絶叫。
その中をひらひらと舞い踊るような…
「煌、やめろッッ!!!!!」
何て――
気持ちよさげなのかと私は思った。
こんなに瘴気に包まれて、あんなに凶々しい真紅の邪眼を持っていて。
何て幸せそうに、何て清々しく。
何て伸びやかに、活き活きとしているんだろう。
していることは、ただの殺戮。
顔に浮かぶのは喜悦と満足と…陶酔。
それが制裁者(アリス)なのか。
私すらも追いつけない速度で、まるで玲様のように舞うように、櫂様のように無駄ない動きで…偃月刀を器用に振り回す。
まるで剣舞。
玲様とはまた違う、凄まじい"艶気"を放ち、惨たらしく踊り狂う。
目が離せないほど、その動きは見る者を惹き付けた。
「いやああああああ」
私の裂岩糸が、ようやく素早い煌を捉える。
煌はにやりと笑って、糸を逆に鷲掴んで私ごと引き寄せる。
判っているんだ。
裂岩糸は、私が"敵"とみなさぬ限り、ただの糸。
私が、煌に対して殺意を抱かぬ限り、私の糸は武器にはなりえない。