シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

体術に切り換えた方がいい。

私は飛び上がり、真上から肘を煌の延髄に落とす。


しかし直前で煌は回した片手でそれを受け止め、手の平の骨を砕きそうな馬鹿力を込めてきて。


私は身体を捩ることで手にかかる負荷を外に流し、その反動を利用して地面を滑り込むようにして態勢を低くし、煌の膝を手刀で打ち付ける。


僅かに煌の態勢が崩れたその隙に掴まれた手を力で離し、背後に回って片手で地面を跳ねると同時に煌の背中を足で蹴りつけた。


確かな衝撃はあるのに、煌にはダメージにならない。


予想はしていた。


これでダメージを負うのなら、私が過去怒る度に煌は無事ではない。


いや、そんなことよりも。


煌の余裕顔が癪だ。


遊んでいるのが見え見えの顔。


戦闘というより、ただのじゃれ合いに付き合っている…そんな顔。


不快に顔を歪めさせた時、煌が冷笑しながら動いた。


己の力を…誇示するように。


「!!!?」


早い。


巨体なのに動きが速すぎて、目では捕まえられない。
存在感を"気"で感じて、初めて煌の動きが把握出来る。



その上で――



「大きく…!!?」



小振りの偃月刀が…巨大化したのだ。


長杖のような柄と、かつて"約束の地(カナン)"で見た罠(トラップ)のような大鎌に似た…鋭利に冷たく光る刃先。


煌の身体でも十分大き過ぎるそれを、煌が軽やかに振り回せば…首がない胴体が忽(たちま)ちにその風圧で切り刻まれた。


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