シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
悔しい。
悔しい。
私の動きが止まれば、煌は…惨劇に真紅色を添えに走る。
瞬時に切り刻まれる胴体。
そして私は見たんだ。
被害者の身体には…
血色の薔薇の痣。
それは首元であり手の平であり足だったりして、発現場所は一定していないけれど。
真紅色は、薔薇の花弁のように散っていく――。
やはり、煌は…"これ"を狩っているのか!!!?
無差別ではなく!!?
ゴロゴロゴロ…。
雷鳴が轟き…ぽたぽたと雨が降り始めた。
そして煌は、ぴくっと顔を1点に向けた。
その先には何もなかったけれど。
だが煌は…目を細め、そちらに走ったんだ。
偃月刀をピアスに戻し、凄まじい早さで走り去る。
だから私は追いかけた。
嫌な予感がしたんだ。
煌を追いかけることに夢中になっていた私は、気づいていなかった。
ビルから落ちた女の屍が
消えていたことに。
そして――
まだ煌の手が伸びず、目を抉られたままの少女も、
煌が小さい偃月刀で首を刎ねた者も、
巨大な偃月刀の犠牲になった者も、
悉(ことごと)く――消えていたことに。
更には――
地面の…陥没の形状。
もしそこに芹霞さんが居たら、
その皹の形を見て、渋谷の時と同様…きっと言ったであろう。
"鬼"
――と。