シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
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それまでの僕は浮かれていて。

幸せというものに浸りすぎていた。


可愛い芹霞。

僕の芹霞。


僕を意識してくれているというだけで、押さえていた愛情が蜜のようにとろとろに零れ落ち、芹霞をくるんで一緒に溶けてしまいたくなった。


今でこれなら、僕の恋が成就したら…僕はどうなってしまうんだろう。


それでも…愛しい芹霞と1つに蕩けて溶け合うことが出来るのなら、例えそれで消えて無くなったとしても、それはそれで幸せだと思った。


ずっとずっと、芹霞とこうして一緒に居たい。

僕の芹霞だということを、堂々と周囲に見せつけてやりたい。


僕の想いは次から次へと、湧き上がるばかりで。


こんな陶酔感と充足感が得られるのなら、僕は何としてでも芹霞を手に入れたい、いや手に入れてみせると心に誓っていたんだ。


"お試し"を、真実にするために。

僕の純愛を全(まっと)うする為に。


そう意気込んでいた処に、青色の楔(くさび)を打込まれる。


明らかに"意図"がある攻撃から、芹霞と僕の愛情を穢されぬよう、そちらばかりに気を回し続けた僕は、次第に余裕を失いつつあったんだ。


おとぎ話の王子様とお姫様のような時間を過ごすはずだったのに、"幸せを呼ぶ魔法使い"は、その時間を止めてくれるどころか、無駄に進ませすぎた。


芹霞に一過性の思い出にされたくない僕は、時間に急かされた。


1分1秒を無駄にしたくない。


芹霞の前では余裕ぶっていたけれど、実際は余裕なんてなかったんだ。


過ぎゆく時間を"まだ数時間"とは思えず、"もう数時間"としか捉えられていなかった僕は、芹霞に向ける笑顔に…次第に焦慮感を滲ませていたと思う。


芹霞との仲を、もっと現実的に固めたかった。


そして目に入った宝石店。

ベタ過ぎる、恋人同士の定番コース。

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