シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
看板をロクに確認もせず入った店は、またもや忌々しい青い男の店で速攻出ようと思ったけれど、芹霞が見てみたいというから仕方が無く。
認めたくないけれど…
正直、デザインは素晴らしかった。
あの男が吐き出すものが素晴らしいから、あの男には酷いものしか残らないのか。
どうせなら全ての毒を吐き出して、善人になってくれればいいのに。
そんな時目に留まったのは、ペアリングコーナー。
ペアが欲しい。
正直、結婚指輪の方が心動いたけれど。
焦っちゃだめだ。
自惚れちゃ駄目だ。
まだ、芹霞は完全な"恋人"じゃない。
恋人同士のペアリングに留めておこう。
そしてもし"お試し"の記念に買った指輪が…僕達の本当の意味での開始記念になるのであれば…その方が最高じゃないか。
それは願掛け。
僕は指輪で芹霞の心を繋ぎ止めたかった。
認めるよ。
僕は――
芹霞の赤い宝石箱に入っていた、櫂の玩具の指輪が忘れられない。
辿々しい文字で書かれていた、求婚の言葉が心から消えない。
それを特別なものとして大事にしていた芹霞を思えば、僕はそれ以上のものを芹霞に渡したかった。
櫂よりも大切にして貰いたかった。
――あたし、神崎芹霞は、
何処までも僕は、櫂に対抗していた。
――紫堂櫂を愛してる!!!
僕から、芹霞の声が消えないんだ。
あいつが芹霞に求婚の意味での指輪をあくまで"一方的"に贈りつけたものであるというのなら、僕は芹霞に"受容された"という意味で、どうしてもお揃いの…愛の"証"が欲しかったんだ。