シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


"APEX"…。


あ、それ…今日だったんだ。


しかも会場は…此処でもやってるんだ。


それは僕の好きな格闘ゲーム大会の名称で、年2回開催される。


毎回競い合うゲームは変わる。


本来ならば、バーチャル格闘ゲーム"KANAN"であったはずだろうけれど…"KANAN"は"約束の地(カナン)"が遊園地に変わった際、櫂が開発ゲーム会社ごと潰した。


明記されていた会社住所には、誰もいなかったから…潰したという言葉は語弊があるかもしれないが、そこから発売されているモノを全て差し止めた。


"KANAN"を消された"APEX"の主催者は焦っただろう、2番目に人気のゲームを打ち出し、それが今回の大会用の公式ゲームとなった。


いつもいつも大会には由香ちゃんがいて、僕と決勝戦を行う。


だから知らぬこととは言え…厳密に言えば僕と由香ちゃんとの付き合いは、実際は2ヶ月前より大分遡ることになる。


彼女は今頃"約束の地(カナン)"にいるだろうが…きっとそれ処ではなく、大会には出れないだろう。


知らぬ輩に優勝の座を譲るのは口惜しいが、僕だってゲーム処の心境ではない。


今はゲーム大会より、芹霞が大事だ。


そう思っていたら、芹霞が戻って来た。


戻って来てココアに口をつけた芹霞は、身体をカタカタ震わせ、そして両手を擦り合わせていた。


凄く――

寒そうだった。



「……芹霞、寒い?」


すると芹霞は、きょとんとした顔を僕に寄越した。


「別に…寒くないけど?」



青白い顔。唇の色が悪い。


僕は芹霞の額に手をあててみたけれど、熱はない。


ない処か…凄く冷たくて。


冷え切ってしまったんだろうか。

風邪でもひかせてしまっただろうか。



そんな時だった。




「――!!!?」



突如、膨れた瘴気を感じたのは。


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