シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


暖房機の前の席に座らせても、芹霞の体温が戻らない。

益々冷たくなっているように思えて、さすがに僕は奇妙に思った。


芹霞の多くなる欠伸。

頻度が高くなる欠伸は、生欠伸と化したようだ。


生欠伸の多発は、身体の異常を訴えていることが多い。


僕は芹霞の手首の脈をとってみた。



「遅すぎる…」


1分に40前後じゃないだろうか。



また芹霞が欠伸をした。



この欠伸…僕は、僕に対する失意の為に出たものだと思ったけれど…違うんじゃないだろうか。


低温度による…睡眠?


まさか…!!


だって此処はそこまで寒くはない。

寧ろ…僕は汗ばんできている。


だけど芹霞の目は微睡んできていて。

繰り返される欠伸と…


「玲くん、何か…痒い。何か虫でもさされちゃったかな。何か出来てる?」


先刻からしきりに掻いている首筋を僕に見せた。


「!!!?」


まさかね。

あるはずがない。



血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)なんて。



僕の見間違い。


これは芹霞がおかしな掻き方をしたせいだ。


指の腹で芹霞の肌を触ってみたけれど…特に違和感はない。

すべすべとした肌のまま。


「何でもないのに…何で痒いんだろう」


蕁麻疹…だろうか。

僕への拒絶感?


またもや心臓が不穏な音をたてる。



「芹霞、ちょっと歩こう」


このままだと芹霞が寝てしまいそうだ。

眠らせるなと、僕の本能が言っていた。

< 275 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop