シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
さすがにZodiacの会場は気が引けた。
これ以上、僕と芹霞の間の空気を悪くしたくなくて。
だけど、熱気に溢れた会場にいけば…芹霞は暖まるだろうか。
そんな煩悶に思い悩む。
ライブ会場からは、悲鳴のような絶叫のような歓声が続いている。
もう音楽よりも声の方が盛大だ。
阿鼻叫喚染みた声音に苦笑が漏れる。
まさか、地獄絵図が拡がっているわけでもないだろうし。
Zodiacは、新たな熱血なファンを獲得しているらしかった。
学園祭の時は、僕達に負けて尻尾巻いて引き上げた癖にね。
「玲くん…ゲームしたいんじゃないの?」
依然微睡んだ眼差しで会場の案内図を見ていた芹霞が、僕の手を引っ張った。
「いや…僕は…」
「行こう、玲くん」
「いや、だから僕は…」
「何か…呼ばれている気がする」
そう言うと…芹霞はふらふらと左の会場に歩き出したんだ。
「ちょ…ちょっと待って、芹霞」
何だか…芹霞の様子がおかしい。
生気のない虚ろな顔は…本当に僕だけが原因なのか?
異常なまでの冷たさは、眠たさは…本当に雨に打たれただけが原因なのか?
何で脈が遅い?
何で痒がる?
僕には、判断が出来なかった。
ただ感じている。
現われては消える瘴気の存在。
そして――
嫌な予感。