シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
芹霞を追いかけるようにして、僕は"APEX"大会会場に足を踏み入れる。
会場は意外と人が入っていた。
立ち見の人達が多いのは、きっと雨宿りの暇潰しなのだろう。
僕は暇潰しをしているわけでもないけれど、だけど何故か…芹霞の動向が気になって。
会場には10機が予選の機械となっていて、そこで勝ち抜けた者が、本戦の10機にてゲームが出来るようになっているらしい。
芹霞は…ふらふらと、予選待ちしている人の列を割るようにして通り過ぎる。
その度に順番待ちしている男達の怒号が飛ぶ。
芹霞は何かを探しているように、ふらふらと…機械の回りを彷徨っている。
僕は芹霞がぶつかり歩く人達に謝りながら、ようやく芹霞の手を掴んだ。
そして――
「玲くん、あれ」
本選の1機を指差した。
「あそこが玲くんの席」
芹霞の声に抑揚がない。
芹霞の表情が…凍り付いている。
蒼白な顔。
"仮面"を通り越して、
硬直したような顔の…筋肉の動き。
眠気と冷感。
遅くなる脈……。
なんだか、それはまるで。
馬鹿な…!!!
芹霞は"死者"じゃない。
何を思ったんだ、僕は!!!
「玲くん…座って」
そして――瘴気。
芹霞が指さした機械から、微かだけれど…瘴気が漂っている。
芹霞は瘴気を掴めない。
その芹霞が、僕に瘴気の場所にて…ゲームをしろと言う。
おかしい。
此処から連れ帰った方がいいかもしれない。
そう思って口を開こうとした時、芹霞が指定した場所に…若い男が座った。
芹霞の顔が不愉快そうに歪む。
「どいて。そこは玲くんの席」
芹霞は男に言うけれど、
「は!!? 俺は順番なの。何だよ、このぶくぶくのブス!!! 出直してきな」
ぴくっ。
僕のコメカミが即時の反応をする。
「ねえ。僕の"彼女"に今なんて言った?」
僕の機嫌が急降下する。