シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
歌
湖岸に沿って、波打つ雲が破れ
二つある太陽が湖の背後に沈み
影が長く伸びゆくのは
――カルコサの地。
黒い星が昇り、見慣れぬ月が
いくつも空を巡る不思議な夜
されどさらに不思議なのは
失われたカルコサの地。
王の襤褸(ぼろ)がはためくところで
ヒュアデスのうたう歌が
聞かれることもなく消え入るのは
朧ろなカルコサの地。
わが魂の歌よ
わたしの声は嗄(か)れ
あなたも歌われることなく消え
涙が流されぬまま枯れ果てるは
失われたカルコサの地。
~『黄衣(おうい)の王』
第一幕第二場
カッシルダの歌
より抜粋~