シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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今思えば――
あたしは煌とは、平気で怒鳴りあったり取っ組み合いの喧嘩をしてきたのに、玲くんとはそんなことをしたことはなかった。
いつもいつもにこにこほっこりで穏やかで。
たまに怒られることはあるけれど…あたしから玲くんへと、感情を剥き出しにして怒りの心情をぶつけたことがなくて。
そうなる前に、玲くんが事前に察してくれていたから。
理解し合おうと思うことも、必要性もなく感じていたんだ。
それが今回――
――買ってあげるから。
――いらないよ、こんなもの!!!
玲くんがあたしの望まぬことをして、あたしは玲くんに…初めての"怒り"を感じたんだ。
だけどあたしは"怒り"よりも先に"悲しみ"を感じてしまって、だけど胸に込み上げる感情の名前が判らなくて…
そこから逃げるように、玲くんとの間に線を引いてしまったんだろう。
それは、あたしなりの防御線。
玲くんとの間を険悪とさせないように、本能が打ち出した打開策。
あたしは玲くんと絶縁したいわけではない。
今まで以上に仲良くしたいんだ。
それが恋であろうとなかろうと、玲くんを慕う心は間違いないから。
――いらないよ、こんなもの!!!
それがもう出来ないと思ってしまった時、悲しみだけが心に拡がった時、突然眠くなった。
現実逃避。
多分、それなんだろう。
眠くて眠くて、玲くんの声が遠くに聞こえて。
更には、貰って身体にふりかけた香水の…その芳しい薔薇の香りが、雨の匂いと共に今更のように鼻に広がって…その幻惑の芳香が余計に眠気を促進させた。
朦朧と意識の中で、あたしが何を口走ったのかも定かではないけれど。
雨の刺激や寒ささえ…まどろむ意識の中では意味がなく。