シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「あのさ……」


そんな時、肩を叩かれて振り向けば。


「ロビーで…隣だった者だけど、オタク覚えてる?」


ああ、忘れない。

休憩所で隣り合わせに座っていた、ド派手の緑色の服を着たカップルで。

それを目印にして手洗いから戻ってきたから。


真正面から彼らをよく見たら、今気づいた。


彼らの緑の服…お互いが接する各側に、半分ずつ合わさればハートの中に完成する某アニメキャラ。


これ…記憶ある。

魔法使い"ゆんゆん"。


小さい頃に見た記憶がある。


あんなマイナーキャラ…わざわざ、コートにプリントするか、普通。

セーターならまだしも、隠しようもないコートになんて。


My Worldを隠そうとしない辺り…なる程。

"そういう"系統のカップルか。


双方とも目鼻立ちが極端に小さい…印象が残らさそうなお顔と、かなりふくよかすぎるお身体。

それを包む個性が強すぎるお洋服の派手な色合いは、あまりにも眩しすぎて色んな意味でくらくらするけれど、彼らはラブラブ期間の真っ最中らしく…恋人繋ぎを見せつけるようにぶんぶん振っている。


「優勝、おめでとさん」


初めて言葉を交わす人達だけど、馴れ馴れしくタメ語で言われてももういいや。


「はい? 優勝?」


「ゲーム大会で、オタクのダーリン、見事に優勝したじゃないか」


男が、糸のような目を少し動かした。


"ダーリン"?


「僕タンなんて予選落ち。この美弥タンも予選落ち。頑張って育成し続けて、今回はそこそこいい所まで行けると思っていたんだけど。飛び入り参加で、僕タン達の憧れの…"軍神"にも勝つなんて、僕タン達超感動!!! ね、美弥タン」

「ね、祐タン」



褒められるけれど、何のことやら。


というより、その言い方何とかして欲しい。


「ゲーム大会なんて…行ってませんけど?」


「は?」


カップルが顔を見合わせた。


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