シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
改めて見渡す会場は。


生者と死者が混在する…此岸と彼岸の境界のような、妙な領域。


凄惨に崩れている血色の肉体。

苦悶の声の存在が…その人間の"生"を唯一確認出来る術。


横たわっているもの。

逃げようと…壁に張り付いている者。


ホラー映画の一幕のように。



会場が暗くて、血色が鮮やかに目に映らないだけ、マシだと思え。

静まり返っていないだけ、恐怖を煽られないと思え。


体が震える度に頬を叩いて気合を入れたり、腕に爪をたてて痛みで恐怖心を紛らわせた。


玲くんは…何処に居る?


生きていて、玲くん。


悪寒が走る背筋を…感じないフリをして、


「玲くん、玲くんッッッ!!!?」


声を上げて玲くんの名を呼び、血色の肉の塊を手でめくるようにして、玲くんが倒れていないかを確認していった。


この中には幸いにも、黄色い蝶は居ないようで。


その安心感が、あたしを地道な作業に没頭させた。


だけど、玲くんらしき人物は見当たらない。


居ないはずはないんだ。


他の場所に居ないのだから…

ここに絶対いる。


何より、あたしは感じるから。


玲くんは此処にいる。



重低音の音楽が思考力を無駄に消費させる。


その時、頬に何かを感じて…思わず手でそれを拭った。


「……水?」


いや違う。


雨?


何で雨?
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