シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

此処は建物内。


雨など入ることはないはずなのに。


あたしは思わず、爪先立ちして天井を見上げた。


照明に邪魔されて確認に時間がかかったけれど…


真上に…光が見える。


割れているのか、歪な形状に見える。


風も感じられる。


どうやら、そこから風雨が吹き込んでいるようだ。


「一体なんであんな高い処が割れるんだろう。黄色い蝶? 真上から来襲してきたんだろうか」


しかし、煌や桜ちゃんの武器も貫通した黄色い蝶が、障害物を破壊して入り込むともおかしな話だ。


そんなことを思っていた時、ずるりと足が滑り。


何と…血の海に転んでしまったあたし。


最悪だ。


一番、やっちゃいけないことをしてしまった。


真紅色が…服に染み付いてしまった。


血って…クリーニングでも落ちないんだよね。


玲くん…何がなんでもあたしこれ買い取るから。

ごめんなさい、分割払いで対応して下さい。


そんなことを考えてしまうのは、現実逃避なんだろうか。


ぬるり。


「うわっ…首からも中に流れ落ちてきた…。ハンカチ、とりあえずハンカチで拭き取らないと…」


あたしは襟元をぐいと広げて、鞄の中入ってある白いハンカチで拭った。


見る見る間に赤く染まるハンカチ。


もうこんなの使えない。


とりあえず、使える処まで使って…


仕方が無いから、此の場でさよならをしなきゃ。



「………」



赤く…染まった布。

ひらひらと揺れる…手の中の布。


何かが…ちらちらと脳裏を掠める。


何かが点滅しながら忙しく走り抜ける。



――がんばれ!!!


あたしの声。


泣きながら笑う…あたしの声。



何?


一体何?
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