シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
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北新宿で煌と思いもしない形で再会し、そして突如走り出した煌を追いかけて…行き着いたのは西早稲田。


聖が、煌の出現予想地域に入れていた場所。


それに意味があるのか、ただの偶然なのかは判らないけれど。


外は本格的に雨が降っていて。

雷鳴と稲光が嵐となる兆候を確実に告げていた。


まだ陽も落ちぬ時間帯だというのに、真っ暗となる空。

横殴りの雨は激しさを増して。


それでも煌の橙色の頭と、黄色い服地は…私の視界で目立っていた。


煌はその中の『S.S.A』と看板がかかった広大な施設内に飛び跳ねるようにして中に入ったんだ。


S.S.A。


名前だけは聞いたことがある。


真剣な表情の玲様とむふふふと笑う遠坂由香が何やら話し込んでいたのを、少し耳にしたことがあるから。


まさかこの施設に私が立ち入るとは思っていなかったけれど。


何の施設かは判らないけれど、やけに青い色に彩られた施設には、通行人は誰もいなかった。


建物の屋根を飛び跳ねて移動する私達。


私の速度は煌に追いつけない。

だが煌は、私が追いかけているのに気づいているはずなのに、何とかしようとする気もないようで。


まるで何かの使命を果たすかのように、ひたすら前方だけを見つめていた。


そして煌が入ったのは、ドーム状の建物。


天井の硝子を拳で割って、飛び降りたんだ。


私もその後を追った。


そして目にしたものは――



「!!?」


先刻、目にしたのと同様な光景。


目を抉られて絶叫を上げる人々。


ドアを開けろとバンバンと扉を叩く人の群れ。


血生臭い匂いが充満する。


そして耳には重低音。


――今週の第1位は!!!


北新宿の…車のラジオから流れていた曲と同じ無機的な機械音が響き渡る。


その旋律の一部として組み込まれているかのような、高低定まらぬ悲鳴。


不協和音故に、今まで以上に拒否感に頭が痛くなってくる。
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