シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
あんなに…
あんなに芹霞さんのことを想い続けてきた櫂様。
12年間という歳月をかけて、ようやく実った恋なのに。
ああ、櫂様。
蘇生されて…芹霞さんに早くお会いしたいでしょうに。
早く、愛を通い合わせたいでしょうに。
櫂様はどんなに嘆かれるだろう。
どんな悲嘆に暮れるのだろう。
私は、櫂様の心を思えば…苦しくなった。
――紫堂櫂を愛してる!!!
あれは無効になってしまったのか。
ウレシイ。
また…白紙に戻ったというのか。
マダカイサマノモノジャナイ。
玲様は。
この状況が判っていて…勝負に賭けたのか。
――皇城と紫堂の間に、縁談が出ている。
ああ、玲様に出ているという縁談話。
それが強行的に…玲様の背中を押したのか。
芹霞さんの心を知って尚、それでも諦められないのか。
そこまで、芹霞さんを想っているのか。
耐え忍んでばかりいた玲様が、いつも櫂様の遠慮があるが故に…はっきりとした行動に移せなかった玲様が、そこまでして覚悟して動いたというのなら。
…この先、芹霞さんを巡る戦いは嵐になるだろう。
芹霞さんが誰かを愛して終わりになるような、そんな安易な展開は望めない。
芹霞さんは…どうするんだろう。
櫂様の記憶を無くした芹霞さんは、櫂様以外の愛を…受入れるのだろうか。
その時、
「遊びは…終わりだ」
蛆の束縛から逃れた煌の偃月刀の刃先が、
目の前に突きつけられた。