シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ねえ…桜ちゃん。
Zodiacの3人組って…何処に行ったんだろう」
私が、映像と音楽を吐き出す機械を探していた時、ふと、芹霞さんがそんなことを漏らした。
そう言えば…。
私が此の場に来た時には、それらしき主役は居なかった。
「この建物自体、入り口を閉鎖されていて…仮に此の会場から逃げ出していたとしても、そうしたら外ではZodiac取り囲んでパニックになっているはず。だけど彼らの姿なんて見掛けなかったし」
――開けて、この扉を開けてッッ!!!
元々…この会場は密閉空間だったのだ。
扉は開いた気配はなかった。
「蝶に…やられちゃったのかな」
私は――
頭を横に振った。
「蝶は…少女しか狙いません。
だからZodiacは…対象外なはずです」
だとしたら…
煌が首を刎ねたのか?
しかし、煌が真っ直ぐに降り立ったステージは誰もいなかった。
もし仮に、Zodiacが聴衆の中に逃げ混ざったのだとしても。
少なくとも、私の目はそれを捉えていない。
以前毎日のように芹霞さんから聞かされていたZodiac情報。
イグ、ハン、レンという愛称の男性3人組。
桐夏の卒業生だというありがたくない過去を持つが為に、学園祭で招請され…私達はZodiac潰しにゲリラライブを敢行したのだった。
家に芹霞さんによって貼られていたポスターを見る限りにおいては、然程の美形でもなく。
普通人よりは多少はいい顔はしているのだろうけれど、私の周囲の男性陣に比べれば、鼻でせせら笑いたくなる程度のもの。
どんな顔であろうと、"悪印象"として心に刻まれている限り、煌を目で追っていた私が見逃すはずはない。
やはり。
私は、この会場で煌が斬った場面を目にしていない。
だとしたら――
Zodiacの彼らは、何処から脱出したというのか。