シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「煌――聞いてるの!!!?」
目の前の芹霞は怒鳴るが…
前と違うんだよ、芹霞。
俺は制裁者(アリス)。
覚悟も無効化してしまう程、心まで制裁者(アリス)に染まってる。
俺は…お前の前にいちゃいけない存在なんだ。
お前の天敵なんだ。
だから、もうお前の前には…
姿を現さねえ覚悟を、あの時つけたはずなのに。
芹霞。
芹霞。
何で弱いんだよ、俺の心。
またお前に会えたのが嬉しいなんて。
俺を拒まないお前が愛おしいなんて。
戻れるのなら、今まで通りに戻りたいなんて。
こんなこと――
望んじゃいけねえのに。
そして同時に――
恐怖を感じてる。
嫌われたくねえっていう心と…
不可解な本能的恐怖。
「これだけ言ってるのに、またあんたはトリップしてッッ!!! どうせ、どうしようもない変なことをぐだぐだぐだぐだ考えているんでしょうッッッ!!」
仁王立ちの芹霞に、俺は顔を背けるしか出来なくて。
「悩んでも答えなんか出てこない馬鹿犬の癖して、何一生分の脳みそを不毛なことを考えるのに無駄に使う!!! もっと効率いいことに回せッッ!!!」
何だか凄い言われよう。
だけど…反論も出来ねえ。
「あたしを見るッッッ!!!」
やましさがでかすぎて、真っ直ぐなんて見れねえよ。
「逃げるなッッ!!!
見るんだ、馬鹿者ッッッ!!!」
俺の首が、ぐきりと変な音を立てた。
お前…
女かよ、本当に。
っーか、何で俺、芹霞の力に敵わねえんだ?
ああ、劣等感に輪がかけられる。
俺の矜持が…ボロボロに…。
同時に感じる。
冷ややかな玲と桜の瞳。
"元々てめえの矜持など、男として情けねえ程小さいものだろうが"
桜の心の声と――
"こんなに女々しい態度のまま、僕の勇ましいお姫様の機嫌を損ね続ければ、僕だって黙っちゃいないよ?"
えげつねえ玲の心の声が…聞こえてくるような気がするけれど。