シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
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芹霞の悪夢はあれから毎夜続く。


それでも芹霞は思い出さない。

思い出そうとすらしない。


考えればまるで噛み合わない…過去と現実の…歪な欠片(ピース)が出ているのに、それが何処からもたらされたものなのか、追及しようともしなかった。


海から上がったという腐乱死体。


それが櫂だとという決め手になったのは、

胸の空洞と…手首に置かれた赤い布。


見つけて警察に連絡したのは、犬を連れて散歩をしていた一般人。

確認したのは紫堂当主と久涅。


僕は…わざと後方に待機させられ、2人のあくどく喜ぶ顔を眺めているだけで。



「櫂に間違いないな」



どんな親でも血が繋がっているというのなら。


血が示した先にあるその結論は…憎悪を抱いていた者であるなら特に、狡猾なその猜疑心故に信憑性をもつものだった。



僕は――

全身の血が凍り付きそうだった。



失敗…だったのか。


櫂が命を賭けた"切り札"は、失敗に終わってしまったのか。


そう叫び出したい心地なれど、それを口にすることは許されず。


――約束、して欲しいんだ。


僕は黙って、信じがたい現実の流れに身を置くことしかできなくて。


知らずに噛みしめた唇には、血の味がした。


血は真紅。


闇夜に吹き出した、鮮やかな櫂の真紅色。


真紅色の絆で結ばれていた、櫂と芹霞。

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