シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ううっ…。成長する、しない?」
「司狼。お前の前にあるコンピュータは、レグの進化しているコンピュータだぞ?」
「わ、判ってるよ、蓮!! ええと…死ぬ、死なない…?」
「電源抜けば由香のキャラが死ぬと思ったから、無謀な試みをしたんだぞ、この仏頂面は」
また…きたか。
「どちみち、電力が供給されなくなった時点で、機械は機能しない。つまりそれは、生きて動いていないと同義になる」
司狼の頭はショートしたようだ。
机に突っ伏して、これ以上を拒否している。
「オレの考えはこうだ」
久遠が言った。
多分…俺と考えていることは同じなんだろう。
「人は、子を成すことができるが…機械は成せない」
機械にできるのは、複製(コピー)のみ。
何処までも何処までも…同じ自分を作り出すことだけ。
「複製(コピー)は人間にはできない。できるのは、自分に似た遺伝子を持つ、別物を生み出すのみ」
つまり機械は――
「機械は、自らの世界を発展できない。人間のように」
「成る程。愛という未知数の"心"により、結果導かれる"子を成す"という行為や結果が増えるというならば、"心"は数値より代数のようなものだね。"心"があれば、比例的に電脳世界は大きくなれる。人間世界のように」
そして遠坂は、微妙な顔をした。
「じゃあなんだい、師匠は"子を成せる"から電脳世界に招かれたのだとしたら、電脳世界で師匠は…誘惑するサイバーガールとウハウハ?」
「由香。いくらなんでも、例え女経験が豊富で…"あの域"に行き着いているという技をもつ紫堂玲とて…0と1相手に"孕ませ"られないだろう」
何と言う…会話だ。
玲がいたら、怒り出しそうだ。
だが"あの域"ってなんだ?
そういえば…煌がそんなことをぶつぶつ言っていたような気もするが。
話の流れ的には、性技の1つだろうが…あの煌でも判らないコトって何だ?
「紫堂櫂。お前まで興味を持って、あの煩い犬みたいに俺に聞いて回るなよ」
久遠が、顔を嫌悪に歪めた。
この男に判って、俺に判らないというのも癪だが…。
本当に、"あの域"って何だろう。
今度玲に訊いてみよう。