シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
俺がどんな思いで此処にいるのか。

言葉も発せられない、身体もまだ完全に戻っていない…こんな苛立たしい状態で。


少しでも逆境を乗り越える為に、

少しでも危篤的な状況を変える為に。


俺の取り巻く環境が芹霞を巻き込むというのなら。

俺は死に物狂いで、何かを掴んで動かねばならないんだ。


氷皇と緋狭さんが"約束の地(カナン)"を示唆したのなら。


俺は何が何でも解決の糸口を探しださねばならない、そんな切羽詰った状況で、ぎゃあぎゃあ騒いでいたのは何処の誰だ!!!



お前は何も判っちゃいない。



――紫堂櫂を愛してる!!



あの時――

どんな思いで、芹霞を振り切って…

緋狭さんの攻撃をくらったのか。


何も知らないくせに。


俺がどんなに芹霞を抱き締めたかったか。


12年かけて、初めて手にできそうだった…俺の望みを、夢を。

どんな思いで、そこから目をそらしたか何も判らないくせに。


もしも俺が生き返らなかったら。


絶望的な未来をも覚悟していたが故に、応えることができなかった俺が。

どんなにどんなにあの時、泣いて悦びたかったのか…知らないくせに。


芹霞とこんなに離れた所にいて。

芹霞の声が聞けない場所にいて。


俺が無事だとも伝えることができないこのもどかしさ。

芹霞がどういう状況にいるのか判らないこのやるせなさ。


会いたくて仕方が無い。

声を聞きたくて仕方が無い。


俺がどんなに――

この手首に巻かれた布に愛を込めているか、何も知らないくせに。

どんなに我慢しているのか知らないくせに。



知った顔で、勝手なことを言うんじゃない!!


俺の想いを…馬鹿にするんじゃない!!


俺を…怒らすんじゃない!!!

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