シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
T…"torus(円環)"
I…"imitation(模倣)"
A…"assecla(寄生)"
R…"ruminatio(複製)"
A…"augmentum(増殖)"
並べられるということは…
その単語に特に意味があるということ。
『TIARA』を端的に言えば…
それらであるということ。
そこに玲…電脳世界を結びつけたら…
何が見えてくる?
「人工…生命?」
遠坂が、呟いた。
「いや…数年前に流行ったろう?
遺伝情報が生命現象の基本であるなら、進化を説明する為に、コンピュータを使って、仮想的に進化や生命的な現象を合成しようという試み。遺伝情報を自己複製プログラムと考えて、コンピュータの中でプログラムを進化させようとした奴さ。
あれによって増殖を繰り返すプログラムが、生き残りをかけて別のものに突然変異したり、突然死したり…人間みたいな進化プロセスを確認できたはずだよね。ああ、これは…きっと師匠なら判っているかも。結局は師匠のメインコンピュータの人工知能も…人工生命の一種だからね。きっと…師匠にこのデータ見せれば、何か判るかも知れないね」
「人工知能…」
久遠が目を細めて、レグ…白皇の残した機械を見つめた。
そうだ、レグの機械もまた…高度な人工知能を持っていた。
人工…いうより、愛という心を持つが故に突然変異した特殊なもの。
俺ははっとして、久遠を見た。
氷皇が示唆したもの。
"約束の地(カナン)"でしか判らない五皇の記録。
それは白皇の遺物にあるのだとすれば。
氷皇が寄越した『TIARA』情報に更に意味を持たせれば…白皇の遺物にも関係しているのではないだろうか。
あくまでこれは推測の域は出ないけれど、とにかく白皇が何を残していたのか。
それを確認しないばかりは、隠匿されているものの外郭も掴めない。