シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
だけどこいつのことだ。
着飾っても、絶対芹霞に誇示や自慢はしない。
じゃあ何だ?
気を引く為か?
――うわっ、久遠。格好いい!! あたしどきどきしてきちゃった。
――見せてくれる為に、着て待っていてくれたの?感激!!!
とかいう、芹霞の賞賛の言葉をききたい為に?
――は? 何勝手に勘違いしてんだよ。オレはせりなんてどうでもいいんだっていつも言ってるだろ。何顔赤らめてるんだよ。馬鹿じゃないのか!!?
ああ…。
複雑で単純な久遠の行動が判る俺って…。
「だから何!!」
益々不機嫌そうに向けられる紅紫色の瞳。
その瞳で着飾る久遠、か。
ああ、何だか頭が痛い。
どうして俺の恋敵は、こんな美形ばっかりなんだ?
玲といい煌といい…久遠といい。
いつもは素っ気無い程シンプルの格好しかしなのに、着飾れば、どれだけ輝く素材なんだよ。
ああ、俺も少しは…お洒落な服でも勉強した方がいいのかな。
いつも、玲が勧める候補の中から適当に選んでいる。
センスいい玲の選択なら…どれ選んでもおかしくはない格好のはずだけれど。
「恋するオトコっていうのも大変だねえ」
気付けば遠坂が、哀れんだ目をして俺と久遠を交互に見遣る。
「君達に"着飾る"なんて、意味ない気もするけれど…着飾ればそれはそれで凄いことにもなりそうだ。むふふふふ」
そして俺を見る。
「紫堂の格好はさ、久遠みたいにエロく乱れていないけど…時折扇情的になるよね。まあ誰のせいとは言わないけどさ」
は?
遠坂は三日月目をして笑い出した。