シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「師匠はさ、紫堂の立場柄、いつマスコミやお偉いさんと会っても、馬鹿にされないようにと…無難なトコの清楚な白系選ぶけれど、…ダークな黒尽くめを見てみたいなあ…ボク。君にはそんな印象ないからさ、かなりのインパクトだと思うんだ。夜の帝王って感じ?」


ダークな黒って…どうしても桜を彷彿してしまう。


「女装でもいいけどさ」


嫌だ。

女装だけは嫌だ。


玲はノリノリだけれど、俺には譲れない矜持がある。

絶対俺が女装しても、引かれる自信がある。


「女装…ね」


不気味な声を発したのは久遠。


「ふうん?」


超然とした笑みを浮かべた。


「へえ?」


何を…考えているんだ?


「女装なら、出歩いてもいいぞ?」


出るなといったのは久遠なのに。


「まあ…出たかったらの話」


そして久遠は部屋から出て行った。




――はずだった。



バタバタバタバタ…。



久遠がドアノブに手をかけた時、

忙しい靴音が響いたと同時にドアが開いて。



「久遠様!!」


それは血相を変えた蓮で。



「久遠様に、今、お目通り願いたいと!!」


「誰?」




「――紫堂久涅。


紫堂財閥"現"次期当主の代理で

"約束の地(カナン)"に来たそうです」



久涅!!!?


俺は遠坂と顔を見合わせた。


一体何をしに、此の地に来た!!!?


まさか――


まさか、気づかれているのか!!!?

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