シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「由香。別にそいつは困ってないみたいだから、諦めろ」
「はあああ!!? 紫堂、なあ紫堂!!! 君の命運は久遠の演技にかかってるんだぞ!!? 矜持なんて捨てて…」
意地でも捨てたくない気がする。
「久涅に感づかれたら、師匠達にも会えなくなるし、神崎にも会えなくなっちゃうかもしれないんだぞ!!?」
――っ!!!
俺は――
頭を垂らした。
久遠に。
屈辱の…懇願の姿勢。
芹霞に会えなくなるのは嫌だ。
皆に会えなくなるのは嫌だ。
その為なら、俺の矜持など。
命すら一度失った身、何を恐れることがある。
"お願いします"
唇を、そう動かした。
「――ふんっ」
まるで表情を変えず、久遠は高飛車な態度のまま、部屋を出て行ってしまう。
そしてひょっこり、顔だけこっちに出して。
「気になるなら、セキュリティ用の…部屋の監視モニタでも、そこで見てれば?」
バタン。
蓮とともに出て行ってしまった。
「素直じゃないな、久遠も」
遠坂がぼやく。
「信じろってひと言言えばいいのに。
初めからそんなつもりだったんだろうよ。
じゃなければ、その布寄越せくらい言うはずだ」
そう苦笑しながら、画面のモニターを切り替えた。