シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

『話はそれだけか? だったら交渉は決裂だ。帰って"お父様"に伝えろ』


久遠が背中を向けた。


『久遠。これは…決定事項だ』


久涅も立ち上がる。


『どういう意味だ?』


『親父がどうのの問題じゃない。それより遥か上が取り決めていた…そう、"運命"という奴らしい。俺が一番嫌う、な』


『上とは誰のことだ?』


『そこまではお前には判らないんだな。紫堂などより上としかいえない。まあ…成り上がりにすれば、各務も上の存在だがな』


『………』


『久遠。俺は…"俺"に気づいたお前を、死なせたくはない。だから…"約束の地(カナン)"を諦めろ』


それは――久涅らしからぬ真摯な顔で。


『お前を…生きながらえさせてやる』


しかし…何処までも傲慢で。


『悪いが…。オレは、自分の意思で此処にいる。自分の意思で"生きて"いる。他人に…オレの生死を口出しされたくはない。

特に…気に食わない奴の顔した年下の男などに』


なれば、久遠の方が上だ。


『久遠。事態は既に動いている』


『とめればいいだけだ』


『久遠!!!』



どうして…久涅は此処まで必死になるんだ?

どうして…いつものように、冷酷に切り捨てないんだ?



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