シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


彼女にも…煌が過去と現在、仕出かした行いについて、許し難い複雑な思いはあるはずなのに、それを完全反故にしてまで、煌が傍にいる生活を切望した。


そんな芹霞さんの姿を見て、何も感じずにいられる玲様ではない。


だからこそ玲様は、煌に見せ付けるように、牽制するように…我が物のように芹霞さんに唇を寄せた。


いつも以上の溺愛ぶりに、慣れぬ私は思わず目を泳がせたけれど。


元来――

櫂様がいなければ、玲様には"遠慮"も"制約"も必要ないのだ。


どんなに煌がいきりたって噛み付いても、玲様にとって"たかが"煌如きに文句を言われる筋合いはない。


"悔しかったら奪いにこい、

――出来るものならば"


美貌も頭脳も強さも、すべてにおいて…

そう言い切れる立場にある方なのだ、本来は。


――紫堂櫂を愛してる!!!


だが現実は…。


もし玲様が"逆転"するチャンスがあるとすれば、確かにそれは芹霞さんから櫂様の記憶が消えている間。


だから玲様が"お試し"による"運命"の逆転を狙っているのだとすれば。



"生涯かけて私に仕えよ。

――裏切りは許さない"



感じただろう。


恐れるべき相手は…櫂様だけではない。


ほっとしたように…そして力尽き、

芹霞さん自ら抱きついて…安心して眠り込んだのは煌の背中。



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