シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


そこには人型はなく。

黄色い蝶もなく。


蛆に食われたのか、それとも消えただけなのか。


まるで雪が降り積もっているかのような…無彩色の、"無"の領域。



「これだな、瘴気の正体…」



煌が…"それ"を偃月刀で突き刺した。


それは…強大な蚕の抜け殻。


半透明の…まるで胎盤のようなどろどろとしたものを流しながら、破裂したような外殻は弾力性をなくした皮のように。


「この中のは…どこだ?」


玲様が固い声を出し、芹霞さんを抱きしめた。


点在する蚕の抜け殻。


他の場所に、動く気配は何も感じられない。



あるのはただ――


なおも蠢く蛆と…瘴気のみ。



「壁が…破られているね」


そこには、大人でも優に出入りできそうな大きな穴が開いていて。


「蚕の中身が外に出て行ったか。

少しでも…逃げれた人がいればいいけれど…」


200人近くがこの建物に収容されているのではと玲様は推測された。


その中から、外に動いて出ているのは私たちだけ。


外は薄暗くなっており…嵐は静まっていた。

まるで人の気配はしない。


不気味すぎる静寂――。

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