シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
玲様の先導で、駐車場に入る。

どうやら…氷皇の青い車で来られたようだ。


しかし依然、駐車数が多い駐車場。


誰も居ない施設なのに数が多いと言うことは…やはり運転手だけが忽然と姿を消したと言うことだろう。


「ボンドカーッッ!!!」


馬鹿蜜柑が興奮して、助手席に座ろうとしたけれど。


私は玲様の無言の眼差しに気づいて、後部座席に連れる。


「何でだよ、何でだよ!!!」


察することが出来ない馬鹿蜜柑。


「玲くん、あたし…」


玲様は酷く真剣な顔つきで頭を横に振り、そして助手席のドアを開けて、芹霞さんを座らせてドアを閉めた。


そしてそのドアに身体を凭れさせながら私達に言った。


「好きな処に落とすから…頼む。

今日は…僕と芹霞の2人にさせて欲しい」


私も馬鹿蜜柑も押し黙り、悲痛な翳りを持つ玲様を見つめる。


「何で今よ、玲」


煌が褐色の瞳を細める。


「……今日明日中に芹霞を振り向かせなければ…僕は結婚することになる」


「あ?」

「紫堂当主の絶対命令だ。仮に芹霞が手に入ったとしても…結婚自体反故になるか判らない危うさはある。だけど…手に入らねば、絶対的に結婚させられてしまう。皇城周涅の画策によって」


「周涅だ!!?」


「ああ、皇城の女と紫堂の次期当主…今の僕との婚姻で、結束を固めようという魂胆なのだろう」


「玲……」


「もし櫂が居ても…結果は同じだ。櫂が僕と同じ目に遭う。だとしたら…僕が今此処で何とかしないといけない。延期は出来ない。延期しても…戻った櫂が愛のない結婚に苦しむ。愛のない子供を作らないといけなくなる。

これは僕自身の問題であると同時に…櫂の問題でもある」


それは悲痛にも思える叫びで。


玲様は…追い詰められても尚、櫂様を心配されているのか。
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