シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「煌!!!
――ありがとう」
玲様がまた頭を下げているのを判っていて、煌は振り返りもせず…手だけをひらひらと振った。
私には――出来ない芸当だ。
これはきっと…
馬鹿蜜柑だから出来ること。
本当に愚かで仕方が無いけれど
情だけは人一倍厚いんだ。
緋狭様に育てられ、芹霞さんと暮らし。
そして8年間の櫂様の幼馴染は。
やはり、過去がどうであれ…
どんなことをしでかしていたとはいえ…
愛されるだけの要素は持っているんだ。
玲様の車が走る音がする。
煌の足が止まった。
項垂れたようなその姿に、私は怪訝な顔を向けた。
「煌…お前…」
煌が戦慄(わなな)く唇を噛みしめていたから。
「芹霞……行くなよ…」
聞こえてくるのは…
絞り出すような小さな声。
「行かないでくれよ…」
切なそうに。
苦しそうに。
「だけど玲は…」
それは――…
必死に想いを抑えつけているかのように。
握られた拳が…震えていた。