シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「君は…僕と2人より、煌や桜と居たかった?」
玲くんは…翳った顔をフロントガラスに向けたまま、そう言った。
「そういう言い方は狡いよ、玲くん」
あたしは、思わず口を尖らせてむくれた。
「………。ごめんね、僕…"お試し"やめたくないんだ。どうしても…僕にとって…大事なことなんだ。煌を…傷つけても」
玲くんの声は少し震えていて、最後の言葉だけ聞こえなかった。
"お試し"、やめたくなくても…結婚はするんだね。
そんな話があるっていうことすら、話してくれないんだね。
結婚するのに、大事な"お試し"なんて…意味判らない。
"お試し"には…結婚に至るような"愛"がないっていうこと?
"お試し"って何?
"遊び"?
"思い出"?
「ねえ、芹霞、行きたい所ある? 何処にでも連れていってあげるよ」
玲くんは、綺麗に微笑む。
「お腹空いてきた? スイーツ巡りする?」
玲くんの結婚話なんて…あたしには関係ないのかな。
あたしを席に押し込めてしてた話だから…あたしには聞かれたくなかったのかな。
気分が降下する。
「………別に」
無愛想に返事をしたのに、それに気づかないのか…玲くんは依然にこにことしたまま言った。
「だったらちょっとさ…拠りたい所があるから、先に寄っていい?」
にこにこ。
玲くんの笑顔は変わらない。
結婚を嫌がっているようには見えない。
あたし…。
ずっと、このまま玲くんに告げられずにいるの?