シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
寝たせいか少し心は落ち着いたけれど、
やっぱりあたしは玲くんに結婚して貰いたくない。
あたしはシートベルトを外して、玲くんの腕に抱きついた。
まるで親猿に甘えている小猿だ。
「どうしたの、芹霞。ふふふ、何だか可愛いね」
穏やかな顔のまま、玲くんはあたしの頭を撫でながら、頭上にキスを落としてくる。
玲くんの柔らかでさらさらとした髪が零れ落ち、あたしの額を掠ってくすぐったい。
「…僕に…甘えてくれてるの、嬉しいや」
温かで、すごく落ち着くこの温もり。
「例え――
……の代わりでも」
最後の声は聞き取れないほど小さくて。
小さく…途切れた。
"終焉"。
何だか泣きたい心地になってしまった。
さっきまでの衝動を思い出す。
あたしにだけに教えてくれない玲くんが悲しくて、腹が立って。
だけど今は――無性に寂しくて。
教えてくれない云々ではなく、もうこうして玲くんの温もりを感じ取れなくなると思ったら、寂しくてたまらなくなったんだ。
離したくない。
ナンデ?
離したら終わってしまう。
ドウシテソウオモウノ?
忙しいあたしの心。
玲くんの"結婚"で取り乱れるあたしの心。
どうして?
「行こう? まずお洋服変えようね」
ねえ、どうして?
どうしてこんなに、
玲くんに"永遠"を求めているの?