シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
久遠、更にはその…体力を持て余している一党は――
放蕩などせず極真面目に働けば、借金の返済期間が短くなるとは思わないんだろうか。
久遠もそれなりに新種の遊園地案は出すのだが、スポンサーの承諾を得ずして…相談すらせず勝手に施工工事に取りかかる。
俺は、此処に来て初めて、増えたアトラクションの存在を知る。
ネットのFXだか株で儲けた金を注ぎ込んで、更なる集客を見込み…次から次へと手を広げる。管理など勿論人任せ。とにかく思いつきと閃きだ。
…その結果による現実的な集客率は、今の処"ハズレ"はないからいいものの、俺だからこそ耐えて目を瞑る…好き勝手過ぎるオーナーの暴走。
コケたら、紫堂諸共多額の赤字を背負う羽目になる。
それも紫堂に払わせようとでもしているのか。
それとも、そうならない自信でもあるのか。
借金を返したいのか作りたいのかよく判らない久遠の行動。
本当に俺は、自由人過ぎる各務久遠という男の思考を読むことか出来ない。
唯一読めるとすれば――
「お前達に言ってなかったな。今回の新アトラクションは、"温海水浴"と"ナイトパレード"だ」
――久遠。此処の海綺麗なのに、どうして夏限定? どうせならこの景色で、温かい海水で1年中泳ぎたいよ。あたし泳ぐの大好きだもの。
あれか。
冗談交じりの芹霞の言葉。
言った本人、もう忘れているはずだ。
――今度皆で、温泉行きたいッッ!!
今は海より温泉だ。
「さすがに久遠様が、巨大ヒートポンプで太平洋の水を温められると言い出した時は反対した。そこで、近隣の海をリアルに模倣した…"温水プール"を作ることにした。砂浜も岩間も本物と間違えるほどの出来だ。かなり人は来ているぞ」
いくら大金をかけた、久遠…。
俺、何も聞いてないぞ?