シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ねえ…知ってる?」
イチルちゃんが、笑いを我慢したような顔をした。
「シンデレラって…怒らすと怖いんだよ?」
「「え?」」
「あの話…誰が一番、可哀相なんだろうね?」
「「???」」
だけどイチルちゃんはそれ以上は、教えてくれず…その日もワンワンを引き摺って帰った。
イチルちゃんの家は何処なんだろう。
可愛い可愛いワンワンを、沢山飼えるのなら、すごく羨ましいな。
「櫂は…ワンワンが欲しいの?」
芹霞ちゃんが聞いた。
「ああ、だけど…櫂のお母さんは、動物の"あれるぎー"というものだから、連れて帰っちゃいけないんだよね…」
昔昔。
芹霞ちゃんと…段ボール箱の中で震えている可愛い小さなワンワンを連れて帰ったら…お母さんが「捨ててきなさい」って怒ったんだ。
ワンワンが近くに居ると、お熱を出してしまうらしい。
芹霞ちゃんが代わりに飼ってくれたけれど…その日に逃げてしまったんだ。
芹霞ちゃんの家族と僕とで、夜遅くまでワンワンを探したけれど…結局ワンワンは帰ってこなかったんだ。
大好きだったワンワン。
もっともっと仲良くしようと思ってたのに。
もう見ることが出来ないんだと思えばとっても哀しくて。
僕はずっとずっと涙が止まらなくて、芹霞ちゃんがずっと"ぎゅう"をしてくれてたんだ。
優しい優しい芹霞ちゃん。
大好きな大好きな芹霞ちゃん。
芹霞ちゃんは僕の"えいえん"で"うんめい"なんだって。
僕達は…ずっとずっと一緒にいるんだ。
居なくなっちゃったワンワン。
消えちゃったワンワン。
『小さいから…余計見つけられなかったんだ、ごめんね』
芹霞ちゃんが、そう言って僕の頭を撫でた。
もっともっと大きいワンワンなら…きっとずっと傍にいてくれるかな。
芹霞ちゃんと僕――
皆でずっと一緒にいられるかな?