シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「ああ!! 2つ目に近付いてきてる。

私は行ってくる!!!

後は頼むぞ、由香ッッ!!! 紫堂櫂ッッ!!

私の部屋は自由に使えッッ!!!」


蓮は走るようにして部屋から出て行った。


「た、頼むと言われても…3つ目開いたら、すぐだだっ広い機械室なんだぞ!!? 

このフロアにある部屋は、洗面所関係と…蓮の部屋。何処にも窓なんかないし…。ん? 蓮の部屋…蓮の…」


そして遠坂は突如走り出してしまった。


「司令官、手を挙げろよ~」


「司令官、待って~

きゃはははは~」


緊張感のない司狼と旭は、喜んで遠坂の後を追いかけている。


まるで状況が判っていないようだ。

傭兵として役立てるのか不安すぎる。


ただ、あの2人の強さをもってしても。


恐らく――

久涅の強さには敵うまい。


時間稼ぎ…と言っても、

俺は何処に逃げればいい?


逃げる…。


久涅から俺が逃げる…。


叫び出したい衝動に駆られた。


ああ、出来るなら。


正々堂々と姿を現して、闘いたいくらいで。


今までの屈辱を…

黄幡会で俺の目の前で芹霞に口付けた屈辱を…

皇城家で、芹霞を僅かなりとも渡してしまったあの屈辱を…


そして横須賀で。


俺の前で芹霞を抱きしめたあの姿を。

そして無効化という力で芹霞を守ったという事実を。


俺は…自らの力で打ち消したいんだ。


久涅の中に…芹霞の想いがあるというのなら。

俺から奪おうとしてるのなら尚更。


俺は逃げたくはないんだ。


しかし――

此処は"約束の地(カナン)"。


俺に用意された舞台ではない。

俺の為に巻き込んではいけない。


だとしたら俺は――

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