シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

俺は画面を見る。


2つめの扉に久涅が手を触れようとした途端――

画面が乱れて…消えた。


2つめの扉は開いたのか。


だとすればあと1つ。


別の画面に久涅が映り…そして蓮が駆け付けたのが判った。


音声は出ない。


蓮が何を言っているのか判らないけれど、しきりに階下に連れていこうとしているようだ。


しかし久涅は…不敵な笑いで首を横に振り、3つめの扉を指差した。


機械室を見させてくれとでも言っているのか。


蓮の顔に焦りが見える。



時間の…問題だった。




その時――


「紫堂、紫堂~!!!」


遠坂が走ってやってきた。


手には何かの服を抱えている。



そして司狼が持っているのは――

旭が持っているのは――



――!!!!?



「紫堂、もうこれしかないッッ!!!」



俺は――

顔を引き攣らせた。



「覚えているだろ、君も!!!

前回"約束の地(カナン)"に来た時ボクが、いつも修道女服の蓮にコスプレさせようとしたこと!!! 結局逃げられてしまったけれど、衣装…まだ蓮が律儀に持っていてくれたんだ!!! よかったよ、思い出して!!!」


いい。


その先は言わないでくれ。


俺は後退った。



「ボクの腕を信じろよ!!」


画面では…

久涅が蓮の手を振り解き、3つ目の扉に近付いていた。


それに飛びついて制しようとした蓮は――

鳩尾に拳を入れられて…崩れた。



「紫堂!! 否とは言わせないよ!!?」



遠坂の怒声。



「さあ、旭、司狼ッッ!!!

司令官が命ずる。


その長い黒髪カツラと化粧道具を持って…


紫堂を取り押さえろッッ!!!」



俺は嫌だ。

嫌なんだ。




「「了解(ラジャー)ッッ!!!」」



女装、なんて。


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